03/04/05 横山秀夫『半落ち』はなぜ直木賞を受賞できなかったのかー1

横山秀夫の作品は『半落ち』を最初に読んだだけでしたので日本推理作家協会賞受賞の『動機』を読んで、その作風にある共通の個性的魅力が感じられました。
署内で一括保管した警察手帳が紛失、スキャンダルに発展する恐れある事件が発生し、内部犯行の疑惑が濃くなる表題作「動機」。
女子高生殺人の前科を持つ男が殺人を依頼される「逆転の夏」。
公判中の居眠りで失脚する裁判官を描く「密室の人」。
拡販競争に巻き込まれ、特ネタを求めて奔走する地方紙女性記者の良心の葛藤「ネタ元」。
警察を舞台にしたのは表題作だけです。
推理小説でも謎解きの中心を犯人当て、犯行方法当てにするジャンルが普通ですが、彼の作品では<なぞ>の中心はいずれも犯行の動機におかれています。その動機がわれわれの誰でもが日常生活の中で、もしかしたら似たような状況が自分にだってありえるかもしれないと感じる、このリアル感でぐいぐいと引っ張る手法は見事なものです。
一時期の松本清張を髣髴させます。
ただし清張の乾いた非情性はなく、管理社会に生きる人たちの家族愛や友情、あるいは憎しみ、嫉妬、心の揺らぎなど人間の情緒面が強調されています。
情緒面の強調という点では浅田次郎風でもあります。
『半落ち』が「直木賞落ち」になった際に物議を醸したことがありましたが、私にはその作風からするとやむを得ない結論だったと思ったのです。
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直木賞|本|横山秀夫
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