2001年4月30日 宮部みゆき「模倣犯」 現代を生きるすべての人に懺悔を強いる告発の書
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宮部みゆきがおそらく後世まで傑作として賞賛されるであろう犯罪小説を発表した。
「模倣犯」。
エンターテインメントとしても屈指の作品。
次々と緊張した場面展開の連続で読み出すとやめられない、よく言うジェットコースター小説である。
犯罪者はこれまで描かれたあらゆる悪のキャラクターをはるかに凌駕する。現代社会に存在する邪悪の凝縮として登場する。その犯罪行為は読むものが怖気立つ描写で詳述されのであるが、善意の人々に対し
「あらゆる不義、悪、むさぼり、悪意に満ち、ねたみ、殺意、不和、欺き、邪念にあふれ、陰口を言い、人をそしり、神を憎み、人を侮り、高慢であり、大言を吐き、悪事をたくらみ、親に逆らい、無知、不誠実、無情、無慈悲です」
この作品が単なるエンターテインメントではないところは人間の直面する、変えることも回避することも出来ない絶対的な状況を犯罪者、被害者、その家族、と第三者(マスコミ、ルポライター、一般大衆)の行動・心理を抉り出すことにより、語っていることにあろう。
カッコ書きはこの犯罪者にピタリあてはまる表現であるが、実は聖書から勝手に引用したもので、絶対者から見た人間一般の姿である。神から見ればあらゆる人間は邪悪な存在なのだ。
「なぜ人を殺していけないのか」との問いが大議論になる今日的社会状況がある。
「汝、殺すなかれ」の戒律から解放された時にラスコーリニコフ的魂の救済方法がもはやありえないとすれば………。この稀有の殺人鬼、その犯行の土壌、犯行が成立する環境などいずれも現実的存在感の重みをひしひしと感じさせるからこそ、これは恐るべき小説である。
雑感をいくつか。
とにかくまれに見る大長編ミステリー。だが冗長さは感じないのです。犯行そのもの、その波紋、そのまた周囲に起こる波紋を丹念に書くがいずれも庶民感覚、すなわち身近にある現実を描いて、絵空事と思えないところで緊張します。
組織の「長」は組織を維持、成長、変化させるために当然、環境変化を読んだシナリオを考えます。そのシナリオ空間にはステークホルダーだけではなく、マスコミ、お役所、マーケットなどなど、思い通りに動いていただきたいと痛感するところがあるでしょう。万事がシナリオどおりに動くはずはないけれど、そのためにいろいろ努力します。
そのプロセスで喜び、落胆、喜怒哀楽の感情が発露されます。シナリオが完成すれば大喜びですね。この犯罪者の心理がわかる。
「模倣犯」の名称、これは作者の間違いではないかと思い続けました。最後になるほどねと感心しました。
オジサンの書評集「よっちゃんの書斎」>「ミステリーの部屋」をごらんください。
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