Paris club(日仏経済交流会)の講演に行ってきました(5月20日)
ALFI(仏検1級合格者の会)から案内メールが届いて、Paris Club(日仏経済交流会)の講演を聴きに行ってきました。
今回のテーマは「マルセル・メリューからリヨン・バイオポール(クラスター)に至るワクチン、生物学診断の世界的リーダーの出現」
予め頂いたレジュメによると、日本に子会社を持つフランスの大手製薬会社・検査分析会社・ワクチン製造販売会社三社の社史及び日本における活躍状況の報告という感じ。
フランスという接点があるだけで、私の専門や日ごろの関心とは全く関係ないので、どうしようかなと思いましたが、通訳なしのフランス語講演を聴ける機会は貴重だし、京橋のメルシャンサロンのVIPな雰囲気を味わえるのも魅力で、とことこ出かけてまいりました。
で、余りにも専門外なので、退屈するかな。とか、心配していたのですが、これが意外や意外。とても面白かったのでした。
私が全く知らなかった今回の主人公三社「Merial(メリアル)」「Sanofi−Pasteur(サノフィ・パスツール)」「bioMerieux(ビオメリユー)」は、19世紀末、マルセル・メリユーという生理学者がリヨンに開いた小さな実験室の流れから生まれた会社で、世界でも有数の医療関係企業に成長。
創設者メリユーの息子、孫がみな研究者で経営を引き継ぎ、発展してきたとのこと。
創設者メリユーの時代からのいろいろな経緯が、三社それぞれの日本代表の方から語られて面白かったのだけれど、一番面白かったのは、これら三社とも、日本市場に参入するのに大変苦労していると言う話でした。
とにかく厚生省の規制が厳しくて、認可と登録におそろしく時間とお金がかかる。
日本の医療業界は、世界第二位の市場なのだが、外国勢はそこになかなか入り込めない。
そんな話を、日本人の口を通してではなく、通訳なしで、「参入したいのにできなくて困っている」フランス企業のトップの口から直接きくと、不思議や不思議、自分の今いる場所が、「日本」から「フランス」にぐいぐいーっとワープして、今まで自分のいた場所を、フランス人の視点から客観的に眺めている自分がいるのでした。
例えば単に、日本の新聞の記事で、厚生省の規制について読んで知識を得るのとは全く違う経験。
「知識を得た」というのではなく、「実際に経験」したような感覚。
日本に参入したいのにできなくて困っているという経験を、疑似体験したような感覚。
とても新鮮でした。
日本の医薬品市場が日本の大手5社による寡占状態であること、しかしながら世界市場レベルで見ると、それら5社のうち、たった一社が上位10位の下位の方に食い込んでいるだけであること、もわかって、それも新鮮な体験でした。
島国日本、医薬品に関しては自給自足状態、海外企業のご参入お断り、ということなんでしょうか。
こういう状態がいいのか悪いのか、判断する能力は私にはありません。
海外ですごくいい薬が出ているのにそれを日本では享受できず、みすみす病気を悪化させたり命を落としたりする患者さんがいるとしたらそれは大問題で、いい薬にはなるべく早く、安く、認可をおろすべきだとは思います。
しかし一方で、元々鎖国することで植民地化を防いだ国なので、そういう「守り」の体質が今も受け継がれていて、海外企業の参入を防ぐことが、世界の中で自国が生き延びて行くために必要だったりもするのかもしれません。
だから、私には本当に、そうしたら良いか、というような意見を言うことはできないのですが、にも関わらず、日本を客観的に見る視点に立てたという意味で、今回の講演会は大変面白かったのでした。
フランス語を勉強し始めてから恐ろしく長い年月が経っており、フランス語を教え始めてからもかなり長くなって、フランス語が自分にとってなんなんだろう、私がフランス語を教えることが、受講生のみなさんにとってどういう風に役に立つのだろう、と考えることもしばしばあるのですが、今回の経験では、「フランス語を学ぶことで、日本をフランスから見ることができる」という印象を持ちました。
今回のように通訳なしでの講演を聴くというのではなく、初歩的な文法を学ぶ場合でも、日本語とは異なる文法を学ぶので、翻って、日本語の文法を、相対的に、フランス人の目で眺めることができると思うのです。
文法というのは、思考の流れを司るものだと思うので、つまりは、脳の中の回路を作り変える、ということにもなると思うのです。
自分の立つ位置を、他者の目で眺める、というのはとても新鮮な経験です。
多くの争いも、それができたら、消えてなくなるかもしれません。
フランス語だけでなくて、外国語ならどの国の言葉でもそうかもしれませんが、フランス語という言語の特殊性もある気がします。
人権と自由に関する思想で先進国であるフランスの視点で物事を眺めることができたら、そしてそうして眺めた物事を、今度は日本人の立場からも眺めて、両者を比較できたら、それだけで、視野がすごく広がると思うんです。
一つの目で見ていた世界を、二つの目で見ると立体になって立ち上がる。
そんな感じ。
そんなことに気がついたという意味でも、今回の講演会は私にとってとても有意義でした。
講演会を企画なさったパリクラブ、案内をまわしてくださったALFI(仏検1級合格者の会)に、心からお礼申し上げたいです。
貴重な経験させていただきました。有難うございます!!
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